アエイウエオアオ

「千里さぁ~ん、※☆◎×さんからぁ~お電話ですぅ~」
さとう珠緒声の後輩が電話を回してきたとき、
一瞬、兄から?と思った。
この娘は、本当に滑舌が悪くて、
クドウさんがスドウさん、コスギさんがコズミさん
になってしまい、いつも混乱させられる。

いったい、仕事中になんだろ?と思って気づいた。
兄ではない!
・・・ドウセイドウメイのほうだ!

どきっっ!

イエデ、ダレカ、マッテルヒト、イルンデスカ

・・・ひさしぶりに思い出してしまったではないか。
もう引き継ぎは完璧に終わってるし、電話もメールも途切れた。
用件は残っていないハズ。何の話だ?
呼吸を整え、「保留」を押す前に、小さい声で
ゆっくり「アエイウエオアオ」をとなえる。

私 「お待たせいたしました。千里です」(←平静を装って・・・)
ド 「ご無沙汰いたしております。突然ですが、前回発注した内容で
  若干、仕様を変更していただきたい点がございまして・・・」

あ、よかった。普通の声だ。
これなら大丈夫。話の内容からもトラブルとかではないし。
私も普通の声で話す。なめらかに言葉は出せてるようだ。

ビジネス会話文例集のお手本のような応答。
安堵もするが、物足りなさを感じるのはなぜだろう。

用件は済んだ。
私 「ご連絡ありがとうございました。またよろしくお願いいたします」
ド 「こちらこそお忙しい中、ありがとうございました。失礼します」

・・・終わった。
受話器を置く前に、小さい声で
ゆっくりさよならをとなえる
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# by senriko | 2005-02-09 01:29 | 仕事

テンピュール夫

何の夢を見たのか、怖くなって目が覚める朝がある。

そんなときは、夫のベッドにもぐりこむ。
夫は、背中を向けていたとしても、
気配を感じて、くるりとこちらに向きを変え、
私の首の下に左腕を入れ、右腕で私の頭を抱え込む。
私も夫の首に左腕を回してホールド。

いつもの、この形。
夫と私の体温が混ざり、少しすると形状もなじむ。

「テンピュールまくら」という低反発まくらがあるが(愛用中)
夫もそんな存在のような気がする。

17年たった。

夫の顎の地点から、夫の顔を見上げる。
・・・白髪、伸びてきたなあ。
・・・鼻毛も出てるなあ。
・・・眉毛、妙に長いのがあるなあ。
深い溝が刻まれた夫の頬をなでてみる。
ザラザラとした髭の感触。
毎日のように、見て、触れて
気づかないでしまったけれど
若い頃とは、まったく別の手触りだ。
その頃に抱いていた「愛」だと思っていたものも
今では違っているような気がする。

でも、こうして、ここにいる。

夫にしてみれば、今、ふと目を開けた瞬間に
可愛げを失ったシミとシワに囲まれた女の顔が
目に入るに違いない。

キョウモ コノヒトト イキテユク

・・・と、小さく小さく誓う。

残念ながら、この先に期待されるような(?)
甘やかな展開はない。
特に淋しくもない。哀しくもない。
哀しくもないということが、すでに哀しいのかもしれないが。
(みたいな表現を、昔、森瑶子の小説で読んだような・・・?)

さ!起きてお弁当作らないと!
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# by senriko | 2005-02-08 22:03 | 夫婦。

スマトラマンデリン

マダムのお店には、あれから何度か行った。
私は、すっかり「隠れ家」を見つけた気分でいたのだけれど
他にもそう思う人は多いようで(当然といえば当然)、
席がいっぱいの日もある。

実は、先日、娘と「ネバーランド」を観た後にも
立ち寄ったのだけれど、
カランコロンとドアを開けた瞬間、ドッと談笑する声。
7つほどあるテーブルは全て、
おもいッきりテレビの収録帰り?とも思えそうな
熱気を帯びたおばさま達の満漢全席風景。

「あらぁ~!ごめんなさいねぇぇ~。
ちょっとォ!ここのコートとバッグ誰のォ?!
待っててくださいねぇ。すぐ席空けるからぁ~!」
と私達を気遣ってくださるが、
マダムの珈琲は静かな環境でいただきたい。
「ありがとうございます。でも、お気遣いなく・・・」
マダムには「また日をあらためて来ます」と挨拶。
「この娘が、この前お話しした・・・」と言いかけると、
そう、と、優しく娘に笑いかけて、
せっかくお越しくださったのに、ごめんなさいね
よかったら、またいらしてくださいね
とドアの外まで見送ってくださった。

日をあらためて、また行った。
今度はひとりで。
この前、ガラスケースに
美味しそうな焼き菓子が並んでいるのを
チェックしていたので
お昼ご飯をそれにしよう、と思いついたのだ。

案の定、お昼どきは、お店は空いていて、
母娘らしい、ひと組の女性がいるだけだった。
お嬢さんのほうは、一見しただけで、
障害をお持ちなのだと分かる。
目の表情や声の雰囲気などからも。

さて。
今回は、ガトーショコラとバナナブレッドにする。
珈琲は、苦味の強いスマトラマンデリンを選ぶ。
オーダーのとき、
「この前いただいた珈琲なんですが・・・」
とマダムに訊ねると
コロンビア・スプレモ、と呼ぶんですよ
と教えてくださった。

丁寧に豆を削る音とお湯の沸く音。そして香り。
まもなく、前回と違うデザインの、
これまた趣味のいいカップで、お揃いのお皿で、
珈琲とケーキが運ばれる。

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# by senriko | 2005-02-04 14:24 | おひとりさま

ほしがれい

ゆっくりとさよならをとなえる
を読み始めて、2ヵ月。

速読女王の私には信じられないスローペース。
しかもまだ3分の2までしか進んでいない。

でも、それがいいのだ。
慌てて頬張ってガツガツ飲み込むより、
香りを楽しみ、舌触りを遊び、ゆっくり咀嚼して、味わう。
美味しいものこそ、そうすべき。

何が良いといって、
ストーリーそのものも、だけれど
文章の漢字とひらがなの配分が絶妙なのだ。

カンタンな漢字はひらがなで記す。

まみどりに、ほんらいは、こんかいも、ほんとうは、はんたいに
・・・など。
ちょっと間をはずす。
彼女のつぶやきを耳元で聞いてるような気分になる。

逆に難しい字は漢字にしてルビを振る。

干鰈(ほしがれい)、金魚の鰭(ひれ)、柿の蔕(へた)
・・・など。

へええ、魚のカレイってこんな字だったんだ。
40年近く生きて、初めて気づく。
「鰈」って「蝶」に似てる。
「干」も「千」に似てる。
そう思った瞬間、
頭の中で1000匹の蝶が舞う図が浮かぶ。
涼やかな気分になる。
(彼女自身は蝶が苦手のようだが)

ルビの「ほしがれい」も「星が零」なんて文字をあてて、
ストーリーと関係なく勝手にまたひとり遊ぶ。

擬音の使い方もいい。

ふしゅうう、たたんたたん(電車の音)
・・・など。

「ふしゅうう」なんて「う」を2回重ねるだけなのに
みずからの重みで空気が抜けていく感じがする。
「たたんたたん」も「タタンタタン」より、遅いリズムに感じる。

私の書くものは、意味さえあってれば、
パソコンで一番最初に変換される文字を
無意識に選んでしまってる。

意識しよう。と思う。

こんどマダムに逢いに行くときも、
この本を携えていく。
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# by senriko | 2005-01-30 16:23 | 出逢い

ネバーランド

昨日、車で移動中、視界が悪くなってきた。
連日の寝不足のせいで、コンタクトが濁ってきたらしい。
こういう時は、何度洗おうがまた濁る。
メガネに替えたほうがよさそうだ。
あ、バッグに入ってない。
しょうがない。
ちょうど昼だし、家に戻るか・・・。

家のドアを開けると、娘の靴(ローファー)がある。
ん?なんだ、早退したのか?
朝は、なんだかやたらと機嫌が悪く、
お弁当の中身に、ぐずぐず文句を言うから
「ほら!遅刻するべ!」と
蹴りを入れて送り出してやったのだ。

娘の名前を呼びながら、リビングを見る。いない。
娘の部屋を見る。いない。
どこ行ったの?
ふと、机の上に日記帳が広げてあるのが目に入った。

今日、ヒグチに『友達に戻ろう』と言われた

・・・あれ?
付き合ってるのってササキ君じゃなかったの?
ヨミははずれたが、ダイエットとメールとメイクに
力を注ぐ姿を見れば、母なりに察するものはあった。
いや。
それよりも。
重要なのは、娘が失恋したってことだ。

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# by senriko | 2005-01-29 20:27 | 娘と息子

○カチュー

何でも縮めて言いたがる日本人。

「冬のソナタ」を「冬ソナ」と略すのはともかく
「世界の中心で愛を叫ぶ」が「セカチュー」なのは、
なんとなく納得できる。

iモードでウーマン・オブ・ザ・イヤーに輝いた
松永真理さんは、『5音』にこだわって
「アイモード」と名づけたというから、
5音は、日本人にとって
やはり一番耳にしっくり来る数なのだと思う。

同様に「自己中心的な行動に走る現代の子ども達」を
「ジコチュー」と呼ぶのも納得。

だけど、この前、あるレストランを出るとき、お店の人に
「すみません、車の出口はどこですか?」と聞いたら
「チカチューのほうですか?」と逆に聞かれてうろたえた。
・・・チカチュー?
あ?ぁ、ぁ、『地下駐車場』のことかよッ!
そのお店の人は、わりとオジさん。
説明しながら、結構、得意げだったりもして・・・。

そもそも、これらの「○カチュー」の語源は何かと考えると
やはり「ピカチュー」に行き着くのではないかと思う。

流行りましたね~、ポケモン(これも略語だ)。
漫画、ゲーム、アニメ、キャラクターグッズ・・・
小学館にとって、ポケモンは『儲けモン』だったね。

うちの子ども達も夢中だったな~。
ポケモンのキャラクターの名前だけを列挙した
寿限無寿限無・・・みたいな曲もあっというまに暗記して
テレビにかじりついて観てた。

そういえば、当時(8年くらい前)、
ポケモンのアニメを見ていた子ども達が
ひきつけを起こしてバタバタと倒れた
「ポケモンショック」と呼ばれる
「光過敏性てんかん」と考えられる発作が起こった。
我が家は地方に住んでいるので、
東京とは、アニメの放送の曜日や時間帯が違うため、
問題の放送を目にすることもなく、よって被害もなかった。
ただ、その後、事件の影響はあまりにも大きく、
各放送局で「ポケモンの放送自粛」のニュースが流れた。

うちの子ども達は、そのニュースにショックを受け、バタバタと倒れた。

・・・すみません。
今までの5音ウンチクから始まった話は
ポケモンネタを言いたかったための長い前フリでした。
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# by senriko | 2005-01-28 11:33 | 娘と息子

愛はあるのに

15年前。娘が生後数ヶ月のころ。
ある日の夕食の風景。
「ごちそうさま」を言ったあたりで、娘がぐずり始めた。

私 「眠くなる前にお風呂入れてあげなきゃ!でも食器も片付けないと・・・」
夫 「それなら、俺やっておくから。早く入れてあげて」
私 「助かる~、ありがとう!」

約30分後、お風呂から上がった私は、水を飲むためにキッチンへ行った。
鍋や食器は、汚れた状態でシンクの中に積み重なっていた。

【食器を片付けるということ】

 私の認識 → 食器をテーブルからシンクまで運ぶ → 洗う → 拭く → しまう
 夫の認識 → 食器をテーブルからシンクまで運ぶ(以上)



現在。
昨夜の夕食の風景。

私はカツ丼を作っていた。(どんぶりモノの多い我が家)
下準備は完璧だ。
揚げたてのサクサク感を残しながら、
半熟の状態を見極めて火を止め
炊きたてご飯でふうふう食べたい!

さあ、いい具合にトンカツ揚がった。
割り下OK!たまねぎOK!
ご飯もちょうどよく炊き上がった!
トンカツを割り下に入れて、と。
卵OK!みつばOK!紅しょうがOK!

卵に火が通る時間を逆算して、
今、炊きたてご飯をよそって、できた具を載せるだけ!

夫 「大変そうだね。何か手伝おうか?」
私 「助かる!じゃ、ご飯よそってくれる?」
夫 「いいよ。しゃもじ!」(手術中、ドクターがナースに言うように)
私 「ハイ!」(と手渡す)
夫 「どんぶり!」
私 「はい」(と食器棚から取り出す)
夫 「お盆!」
私 「・・・はい」

(心の中)

ああん、今、目を離せないとこなのにぃ~。
しゃもじ取り出すとこから自分でやってよぉ~!

・・・あああ。ご飯ちゃんとほぐしてくれないと。
ドーム型によそってるじゃん(鍋肌痕くっきり)。
そんなにテンコ盛りしたら、具を載せたとき、あふれちゃうよ~。



夫 「あちッッ!」・・・ガシャン!

炊きたてご飯が夫の指に触れて、どんぶりを落とす。
割れる。散らかる。
後片付けに数分を要す。
その間、衣は水分を吸い、割り下は煮詰まり、卵は凝固。




・・・愛はあるのに。何かが違う。
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# by senriko | 2005-01-24 01:02 | 夫婦。

あんかけ湯

2年前。川上弘美に出遭ったのは、これが最初。

蛇を踏む

読んだのは新幹線の中だった。
目を上げると、車窓の風景は
飛ぶようにスイスイと明るく流れていた。
一方で、書物の中では
ゆっくりとゆっくりと、ものがたりは進み、
いや、進んでいるともいえない。
終わりそうで終わってゆかない。

その落差に酔った。
吐きそうになった。
たぶん毎食カレーを食べ続けると同等の気持ち悪さだ。

なんだろう、この読後感は。
本当に、蛇踏んだ、思い。
ぬめぬめした冷たい液体に足をとられ
その濃度のせいで水底に足が付きそうで付かない不安感。

私は、あるひとに逢いにゆかねばならなかった。
その心細さとシンクロしたのだろう。

書物のなかでは、
無気力なひとびとが
もはや死んでいるようなひとびとが
何もなさずに日々を人生を終わってゆく。

でも、私は立ち向かわなければならない。
(そうしたくなくても)

もう川上弘美を読むことはない、と思った。
本は降りた駅で捨てた。

ふと、また読んでみよう、と思ったのは
先月、ホテルにこもる前に立ち寄った本屋でのこと。
平台に並ぶ中に、その本はあった。

文庫本の装丁が美しかった。
ひらがなだけのタイトルも美しかった。
ナイフでぽりぽり彫ったような書体も美しかった。
手にしたのは

ゆっくりさよならをとなえる

ホテルにてチェックイン。
部屋に入ると、すぐに
いい香りの泡のお風呂で体を温める。
音楽はENYAにする。
ハーブティを飲む。

そして読む。

ああ、なぜだろう。
かつて感じた不安(ふあん)感が“ふわん”感に変わる。

そのとき私は開放されておだやかだった。
その思いとシンクロしたのかもしれない。

「ぬめぬめとした冷たい液体」は温度を上げ、
とろ濃ゆの、あんかけ湯に変化する。
やはり水底に足はつかないが、
体が浮遊するような、たゆたう感じは
むしろこころを解き放つ。

じっくり浸かることにする。
早く読み進めることはしないでおく。
(私は自称・速読女王なのだが)

ふと「蛇」と「虹」は似ている字だと思った。
私が踏んだのは虹かもしれなかった。
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# by senriko | 2005-01-22 16:18

朝の会話。

私「おはよう」
娘「てゆうか、今日、寒くなくない?」

(心の中で)

・・・娘よ。
なぜ、否定から始まるのだ。
そもそも「おはよう」の何をどう否定したいのだ。
しかも「~なくない?」とさらに二重否定するほどの
意味あるコトバとして「寒く」が値するものなのか?
で、アンタは結局、寒いのか暑いのか?

ををを~!
娘をヘコましてやりたい衝動が。

てゆうかYouか優香が夕方泣く泣く無くした鳴く○○ってなくない?

・・・しかし。
○○に充当する単語が見つからず、使用不可。
(※この際、募集しちゃいます。採用された方には特製グッズ進呈、とか)

ほら!考えてたら、目玉焼き、焼きすぎたよッ。
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# by senriko | 2005-01-21 19:16

まろやかな丘陵

昨夜、息子が風呂あがりに
「ママ!チン毛はえたよ!」と全裸でリビングにやってきた。

どれどれ。

確かに1センチ弱の長さで先細の物体が、
湯気が立つよなツヤプル肌を垂直に突き破って、
んにょっ、と出現。

私 「ふ~ん。ワキ毛より、いきなり剛毛なんだね~」
(そのときも見せてくれたのさ)
息子「うん。そうだね」
なんて、さわやかな親子だろう、私たち。

まろやかな丘陵に1本の芽?草?木?
やはり「毛」としかいいようのない、なんか不思議な光景。
ついでに、息子のムスコも、つんつん、とつついておく。
「うきゃきゃ♪」と無邪気に震えて笑う息子とムスコ。

多分、触らせてもらえるのは、これが最後だろう。
いや。そうしないと、ね~。
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# by senriko | 2005-01-18 17:57 | 娘と息子